先走り気味の君
休憩がてら、ふらりと立ち寄ったファストフード店での話。
人の少ない奥の方の席でサンドイッチを食べていたら、背後から若いカップルと思しき声が聞こえてきて、私の斜め後ろの席に落ち着いたようだった。
人が少ないので、聞くとは無しに聞こえてくる二人の会話。
👨「昨日は何してたの?」
👩「昨日は一人でアニメイトに新刊買いに行った。上の階にあるメロンブックスってとこも本当は行ってみたかったんだけど、何か一人じゃ行きづらくて・・・。」
👨「ああ、あそこはわりと男性向けの物が多いからね。(✧≖‿ゝ≖)女の子は入りづらいかもね。」「あそこにはね、漫画本だけじゃなくってもっとマニアックな・・・(以下略)」
と、男子は一人でお店の説明から、今流行りの漫画●●の巨人の考察など、得意げに演説していた。
それに女の子も相槌を打ったり、感嘆したりしていい感じの雰囲気だった。
👨「で、○○ちゃんって、コスプレ興味ある?」
👩「えー?えっと、本当は少し興味があって、出来たらしてみたいなーって思わなくもないの。」
👨「本当!じゃあやってみようよ!」
👩「やるんだったら、●●の巨人の○○ってキャラやってみたい!!
( *ˊᵕˋ )✩‧₊˚」
👨「それ、いいね!」
微笑ましいサブカル系カップルだなと思いながら続けて会話を聞いていた。
👨「あのさ、そのキャラのコスプレもいいんだけど、衣装とかすぐ準備できないよね。○○ちゃん、高校の時の制服ってまだ持ってる?」
👩「まだ家にあるよ。だって今年の春まで着てたもん。」
👨「良かったー。まだ持ってんだ。で、それセーラー?ブレザー?」
👩「ブレザーだけど。」
👨「ブレザーかぁ・・・。あっ、そう言えば○○ちゃんって妹いたよね、妹のは?」
👩「えっ、妹? 妹の学校はセーラー服だよ。」
👨「良かったぁ! ねぇ、今度会うときさぁ、妹のセーラー服着て会おうよ!」
は?何という男だ?
何かあやしい方向へ向かってきたぞ。
👩「だって、妹は現役高校生だし、土曜や日曜だってたまに課外とか部活で学校行くから無理だよ。」
👨「休みの日とか、スペアのセーラー服も無いの?」
👩「えぇー!!( ゚Д゚) 妹と私じゃ体格が違うし、そもそも妹のだから借りたら嫌がるだろうし・・。」
👨「じゃあ、準備するから、それ着てくれる?」
👩「えー、あの、本気でー?」
👨「今度いつ会える?」
👩「いつかなぁ・・・。」
👨「来週空いてるはずだよね? その日はどう?」
👩「その日はお友達と約束が・・・。」
👨「俺と会いたくないの?」
👩「そんな訳では・・・。」
👨「きっとセーラー服似合うと思うんだぁ! 着てみようよ。
(*゚∀゚)=3」
👩「(;´Д`)・・・・。」
凄く気になってチラリとカップルの方を見ると、若いのに珍しい黒髪のロングヘアで色白の上品なお嬢さんの困り顔と、細身でチェック柄のシャツを着た若い男の前のめりな背中が見えた。
最後まで会話を聞いていたかったが、そういう訳にもいかず、その場を後にした。
セーラー服マニア男の「今度いつ会える?」は叶わないんだろうなと確信しながら次の場所へ移動した。